こんにちは、キカガクで機械学習の講師をしている和泉です。突然ですがみなさんは DX という言葉について、どのようなイメージをもっているでしょうか。
AI をビジネスに活用するための講義をしていると、受講生から DX についてこんな悩みを聞きます。
A さん
B さん
DX は特定の技術そのものよりも、技術の活用方法や組織のあり方やビジネスモデルそのものまでの変革を指している概念のため、現場で実現させていくイメージが難しいのかもしれません。
本記事では、DX について皆さんが少しでも共通のイメージをもてるように、活用例や実現までのステップを解説していきたいと思います。この記事を読んで、DX を実現していくための第一歩を踏み出してください。
DX で変わる私たちの生活
まず、DX という言葉の定義についてみていきましょう。DX とは「Digital Transformation」の略で、X は様々なものが混ざり合うことや変革という意味を表現しています。まだ新しい概念のため、統一の定義などがあるわけではなく、様々な文脈で語られることが多いです。
参考
経済産業省「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン」
経済産業省の定義では、上の図のように表現されていますが、少しイメージがしにくいかもしれません。例えば DX とは、紙にハンコを押す行為が、タブレット上のアプリケーション操作に変わることを指すわけではないのです。
DX が指す対象は、個別の業務やサービスだけではなく、ビジネスモデルそのものやビジネスを行う主体である組織と企業文化にまで影響します。まさに、デジタルを使ったトランスフォーメーションで「私たちの生活」が変革するといえるでしょう。
DX の実現例
私たちの生活がデジタル技術によって一変したものとして、EC サイトによる個人の購買体験が上げられます。今では多くの人が当たり前のように、インターネットを利用してのショッピングを楽しんでいますし、EC サイト自体は 10 年以上前からありました。しかし、個人にパーソナライズされた購買体験は、近年の DX の一つの実例だと考えることができます。
例えば、過去の購入履歴や自分と似たユーザーの購買情報などから、値段や好みに応じて最適な商品がレコメンドされますし、購入した商品の配送状況もリアルタイムで通知されます。また、お気に入りのブランドの新商品の入荷がお知らせされたり、自分だけに特別なクーポンが発行され、まるで専属のコンシェルジュがついているような気持ちにさえなります。
これほどまでに個人に最適化された購買体験は、AI やデータ活用なしには実現することができないため、近年の DX の成果の一つといえるでしょう。
DX の本質と 3 つのプロセス
DX によってサービスやビジネスモデルが変わり、企業が変革を起こすプロセスは下の図のような 3 つの段階で捉えることができます。
デジタル化
第一段階は、デジタル化のステップです。まずは、既存のサービスをデジタル化することで、アナログに処理していた情報をデジタルで処理することができるようにします。紙と鉛筆で処理していた伝票をパソコンで処理するイメージです。
デジタル活用
第二段階は、プロセスの自動化です。デジタル処理されたデータは、コンピューターによって自動で計算されたり、相互に送受信したりすることが容易なため、人間が行っていた業務を自動化することができます。例えば、入力された注文情報から売上や発注の情報を自動で計算するイメージです。
DX(DigitalTransformation)
第三段階は、サービスの変革です。デジタルでデータを収集し、自動で計算した情報をもとに、コンピューターがリアルタイムに現状を分析したり、未来を予測したりすることで、これまでにない購買体験を生み出すことができます。先に紹介した、EC サイトでのショッピングや音楽配信のストリーミングサービスでは、大量のデータを AI がリアルタイムで分析・予測をすることで魔法のようなサービスが成り立っています。
データとAIの高速ループ
データやデジタル技術の活用の大きな役割には、効率化やコスト削減といった側面もありますが、データの蓄積と分析を何度も繰り返すことで新たなサービスを生み、自社の事業戦略やビジネスモデル自体にまで変革をもたらすことが最も大きな目的です。そして、これこそが DX の本質といえるでしょう。
本記事のまとめ
本記事では、DX の活用事例や実現までのステップについてみてきました。DX の 3つのプロセスを理解した上で、もう一度ご自身の身の回りのサービスを見てみると、その変革に気づくことができるでしょう。
そして、自社のサービスやビジネスモデルの中で、DX のステップのどこまでを実現できているのか、変革すべき本質は何なのかを、ぜひ一度考えてみてください。
そして、興味をもったら、DX を推進するための組織体制や技術の詳細まで、学びを深めてください。
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